「乗り込み」とは?
次の一歩を踏み出そうと片足を前に出して、その足が接地し体重が掛かる。
反対側の足が浮き始めてまた次の一歩と続く。
「足を地面に着く」という行為をどれだけ質の高いものにできるのかが、ランキングの質をも決めるという話。
ランニングの上級者と初心者の違い
ランニングの上級者と初心者との違いは、足の運び方に現れる。
マラソン大会を観戦し、生で足運びや足音の違いを見聞きしてそう感じた。
初心者のストライド幅が狭い原因は、そもそも足の運び方が上級者と異なっているからだ。
これまでの経験を踏まえて、例えば100mや200mの短距離走で上達するには、素質というか適性がある。
具体的には、ケイデンスが240spm以上出せないと100mを13秒台で走れないからだ。
例外はあるとしても、競技者として結果を出して行くには、短距離走ほど運動能力が重視されると思う。
しかし、長距離走の場合、練習方法とそこに割ける時間によって、結果が大きく変わって来ると言える。
特にストライド幅が100センチ以下になってしまうフォームは、改善できるポイントが多いし、具体的にはキロ5分ペースで走れるタイムは練習次第な範疇ではないだろうか。
キロ5分ペース
調子がいいと、キロ5分ペースは意識しなくてもクリアできる。
でも疲れやケガがあると、その壁はとても高い。
基本的に、ストライド幅が100センチ以上出せないと、キロ5分ペースをキープして走るのは難しい。
こみちはキロ5分ペースで走れるようになった後、キロ4分、3分とペースアップを目指した。
結果的に距離設定が短ければ、キロ3分台も不可能ではなくなった。
でも出せるようになったのは、こみちの運動能力が高いからではない。
50m走で9秒を切ったことがある人なら、少し練習するとキロ3分ペースで走ることはできるだろう。
長距離走の場合、トップスピードの向上と速度のキープが大きな課題で、キロ3分ペースで300mを走れても、1キロ2キロと距離伸びれば話も変わってしまう。
つまり、キロ5分ペースに関しても、最初は出せるようになることが目標で、そこからは効率的にキープする練習へと変化する。
キロ5分ペースで200m、その後はキロ8分で1キロ。
そんな感じで、ランニングしながらキロ5分ペースで走ることに慣れることだ。
1キロなら大丈夫。2キロなら大丈夫。
そんな風に距離を伸ばせば、10キロまでいけるだろう。
キロ5分ペースの一方で
一方でキロ5分ペースになれて来たら、キロ4分40秒ペースの走りにも挑戦してみる。
ケイデンスが高くなる場合とストライド幅が延びる場合とがあるが、それはランナーのタイプで決まる。
ただ、これは経験談だけれど、ストライドが長くなってもピッチが早くなっても、さらにスピードが上がるとその両方が限界までアップする。
当時のこみちで言えば、ペースを上げた時はストライド120センチ、ピッチが200spmくらいになっていた。
もう少し触れると、こみちの場合、先にケイデンスが上がって210spmくらい出るようになり、膝の上げ方を工夫したらストライド幅が100センチを超えた。
特にストライド幅100センチを超えることが難しく、いろんなアプローチを経て克服できた。
今にして思えば、無駄なことも多かったし、克服できた方法も間違いだった。
最初は膝頭を意識的に一個分高くして走るようにした。
初心者に多いすり足や狭いストライドの原因は、膝頭の高さと関係していて、こみちの例外ではなかった。
その後、太ももを持ち上げる意識を持つか、上げた太ももを振り下ろすのかで悩んだこともある。
強い反発力は強い振り下ろしだと誤解していて、ほとんど踵げりのような感じで地面に踵を突き刺しながら走っていた時期もあった。
この動きをすると、上下動が大きく、でもあまり前に進まないフォームになる。
このフォームで走るランナーもよく見かける。
そこから振り上げに意識は完全に移行し、軸足よりも軸足から振り上げる動きに着目して走るようになった。
その頃にはストライド幅も100センチ以上だったと思う。
今はもうその意識も薄れて、振り下ろしのタイミングだけを意識している。
強さではなくタイミング。
体重が軸足に掛かったタイミングで、股関節からさらに下側に押し込む。
押し込む時間は0.1秒もない。
むしろ押し込んだらすぐに前に振り出したいくらい。
イメージとしては、押し込んだタイミングで体重を支えて、重心が前に抜けたらすぐに軸足は地面から離れる。
この動きを極限までアップさせて、ケイデンスを250spm以上まで上げたい。
踵で着地すると振り出しが鈍くなるから、フォアフットで着地し、アキレス腱の伸縮で素早く振り出せるようにしたいというのが課題になる。
左ふくらはぎの傷みを解消しないと、その練習ができないので、今は踵着地でケイデンスアップを練習中だ。
大体230spmを超えるくらい。
それでもケイデンスが高くなれば、自ずとキロ3分ペースは出てしまう。
キロ5分ペースで走る練習は、トップスピードの向上とは別メニュー。
「乗り込み」に対して深く理解できると、フォーム改善のポイントが明確に認識できるようになる。
面白いことにキロ5分ペースを初めて出せた時のフォームと、トップスピードがキロ3分ペースになってからのフォームは全く違う。
単純に速い遅いではなく、「乗り込み」をどれだけ意識して走れるのかが違うからだ。
それはつまり。同じ3キロを走っても成果が違う。
何も考えずに月間300キロ走っても、心肺機能の向上に貢献し、キロ5分ペースとかキロ4分ペースまではカバーできるかもしれない。
しかしキロ3分台、3分切りのペースになれば、「乗り込み」を意識しないランナーはいないだろう。
そして、キロ3分ペースのランナーも、体の負担を考慮して、毎日そのペースで走っている訳ではない。
週の大半はキロ5分ペースでもいいくらいだ。
ただ「乗り込み」を常に意識して走ることが大切で、こみちの場合だと乗り込みを意識していると勝手にペースが上がってしまい、キロ6分ペースでゆっくり走るつもりでも気づけばキロ4分とか3分中盤になっている。
ペースが変わる理由は、乗り込みの処理速度だと思うから、速いランナーが軽やかに見えて、遅いランナーはどこか地面に接している時間が長く見える。
そして、流行りの厚底シューズも、ペースが遅いランナーは乗り込みも不正確になる傾向が強く、推進力を発揮させるほどプレートをたわませていないようにも見えた。
そう感じたのは、ストライドが歩幅に近い90センチ以下に見えたから。
その意味では、これからランニングを始めたいなら、反発力のあるシューズよりもクッション性が高くて膝関節に優しいシューズを選ぶこと。
そして正しいフォームを経験者に教わった方がいい。
フォームは段階的に変わるものだから、初めてから3ヶ月、できれば半年くらいはしっかりと指導を受ければ、ケガしないでランニングフォームを身につけられるだろう。