なぜ「つま先(フォアフット)」で走ろうとするのかという話

 なぜ中上級者の選手たちは「踵着地」を選ばないのか?

約半年間のランニングで感じた結論。

ランニングにはいろいろな目的がある。

例えば健康維持や向上、スポーツとして自己タイムの更新、陸上競技としての技術力の探求など。

こみちが目指しているのは、健康維持と向上。さらにあるとするなら「旅ラン」ができる基礎体力を身につけること。

ただ目的や目標に関わらず、ランニングと関わるのであればケガなどの予防や正しいトレーニングは身につけた方がいい。

「ランニングとは?」と聞かれて、「左右の足を交互に出して移動すること」と答えた人がいたとしよう。

確かに間違いではないし、そんな理解のままでランニングを始めてもいいはずだ。

しかし、全くの初心者がそれだけの理解でランニングを始めた時に、気をつけたいのが「膝の関節のトラブル」だろう。

その一因は単純で、負担の多いフォームで走っているからになる。

じゃあ、負担を減らして走るにはどうすればいいのか。

それが「歩く」という軽度の運動では問題にならなかった「重心よりも前に着地する」という動作を無くすことだろう。

つまり、「ランニング」は前に出した足の位置まで体が追いついたタイミングで着地しなければいけない。

足を大きく前に出すなら、それだけしっかりと体も前に進む推進力を得ている必要がある。

しかし、初心者のランニングにありがちなのは、「足を前に出す」ことが推進力の根源になってしまい、結果的に「踵着地」をして体が遅れて付いてくる。

この順番になる限り、「膝」を傷めてしまうリスクは無くならない。

さらに言えば、もっと走ることに慣れてスピードを上げられるようになると、それまで以上に「膝のトラブル」に悩まされるだろう。

目標や目的に関係なく、ランニングは地面に着いた足で推進力を得て、前に振り出した足に体が追いついて着地する。

それを繰り返す運動でなければいけない。

その大前提をクリアして、例えばストライド走法やピッチ走法というようなフォームの違いが出て来る。

現時点で両者の違いを簡単に紹介したいけれど、実は大きな差がないというのが本音だ。

というのも、ストライド走法の無駄な動きを排除すると、ピッチ走法になるからだ。

ランニングが、目的や目標に関わらず、軸足で推進力を得ているという前提に立つと、ランナーにとって推進力を得た軸足はできる限り前に振り戻し、先に振り出した反対側の足を軸足にしたい。

このテンポがより速やかななるとピッチ走法と呼べる。

一方で、推進力を得て体が移動することに着目するとストライド走法になる。

結局はどこを見て判断しているのかに過ぎないし、ストライド幅を犠牲にしないでピッチを上げて走ることが最も理想的なフォームであることに変わりない。

ではなぜ、中上級者のランナーは踵着地をしないのだろうか。

今、自身の足を体よりも「前」に出してみて欲しい。

すると「踵着地」できることが分かるだろう。

一方で、体の真下に足がある時、「踵着地」ができないと気づく。

つまり、「ランニングとは?」という最も大切な大前提は、軸足を使って推進力を得ることだから、本来なら踵着地などあり得ない。

しかしながら、空中移動を「低く」行う場合、もう少し高い角度で浮遊するよりも鋭角に着地してしまう。

ポンと高く跳ね上がると、より着地のタイミングが簡単になるのだが、その移動は上下も多く推進力を得たいという意味ではロスになる。

そこで、上下動を極限まで減らしていくと、着地は踵からになりやすい。

ただ単純に前に出して踵着地する場合とは違い、踵着地をしても膝関節には大きな衝撃にならないように素早く足の裏へと体重が移動する。

ピッチ走法を極めることで、踵着地になるのは、そんな極限を狙っているからだろう。

ストライド走法で最も無駄な動作が、推進力を増そうとして行う後動作である。

キロ4分ペースで走ると、毎秒4メートルくらい移動している。

ランニングでの着地時間が0.2秒程度と考えると、接地している間にも体は1メートル近く移動することになり、じゃあ足をどれくらい後方に押し出せるのかという疑問が浮かぶ。

結論としては、着地後に足を使って意図的に蹴り出しても推進力を増すことはほぼできない。

それよりも、「腱反射」を使い「アキレス腱」の特性と大臀筋のパワーで推進力を発揮させることが理想的だ。

どういうことかと言えば、バネのような動きができる「腱」の特性と下向きに大きな荷重を掛けられる大臀筋を組み合わせ、ランナーは着地でできる限り下向きに荷重する。

つまりこの動きが「乗り込み」で、この動作ができないと「お尻で走る」というフォームにはならない。

乗り込み動作によって、下向きに加えた力をどう推進力に変えるのかだが、こみちはずっと地面そのものからの反発を使うと思い込んでいた。

だから、踵を強く地面に着くことで反発力も増していると誤解して来た。

しかしどうやら反発力は地面そのものではなく、「アキレス腱」のバネとしての特性を使うようだ。

つまりふくらはぎの筋肉を固定化し、アキレス腱が優位に動く状態で着地するのだ。

さらに、アキレス腱が動きやすくなるには、少し浮いている方が都合良く、結果的につま先だけが地面に触れていることが理想になる。

アキレス腱を使うことで、大きな推進力を得られるだけでなく、接地時間も踵を使うより短くできるので、ピッチを上げることが可能になる。

ストライド幅を犠牲にせず、短時間で推進力を得られ、しかもピッチも上げられる。

中上級者のランナーが、なぜフォアフットを選ぶのかは明白だろう。

二足歩行である限り、フォアフットで着地し、アキレス腱と大臀筋を活かした走法が最もスピードを高めるフォームだと言える。

目安を示すなら、自然に走るだけでキロ4分ペースくらいになってしまうだろう。

必要ならさらに素早く反力を得て、足を回すことができれば、キロ3分前半まで一気に上げられる。

一方で、しっかりと推進力を得てはいるが、まだ余裕を残したストライド走法の場合、キロ4分ペースから4分30秒ペースくらいになる。

テンポはとてもゆっくりで、ストライド幅で進むから、見た目以上にゆっくり走っているように見えるかもしれない。

しかし、最も無駄なのは、軸足が地面から離れ後方に動く時だ。

つまり、推進力にもならないのに、地面を必要以上に押し続けてしまうこと。

そうではなく、推進力を得たら、速やかに左右の足を入れ替えなければいけない。

シザースジャンプのようなトレーニングで、より効率的な入れ替え動作に慣れるべきだ。

なぜなら、この入れ替え速度こそ、最大ピッチを決めるので、最終的なトップスピードにも繋がる。

だとするなら、軸足が後ろに流れてしまう動きが、どれだけ無駄なのか理解できるだろう。

「踵着地」が悪いのではなく、軸足を活かして推進力を得るフォームなら、「腱」と「大臀筋」を最大限に使いたい。

逆にそれらを積極的に使わないとストライド幅がガクンと落ちてしまう。

だからピッチを上げてカバーしようとしても、こみちの場合は反発を使わないとキロ5分ペースでもキツかった。

逆にそれくらいのスピードで十分なら、踵着地でも十分だと言える。

ただもう少しスピードが欲しくなった時に、そのフォーム故に膝関節の故障には十分な注意が必要だろう。

少なくとも足の裏全体で着地すれば、圧倒的に膝関節は楽だし、スピードに関してもキロ4分ペースまでなら慣れの問題だ。

しかもストライド幅が増えると、ゆっくり足を動かしてもペースが落ちないので、覚えてしまうとピッチだけに頼ったフォームには戻せない。

全てのランナーがフォアフットで走る必要はないと思うけれど、そうして走るにはやはり理由があるし、こみちのような初心者でも、その仕組みを理解しておくと、現段階での最適なフォームも理解しやすい。

何も難しい話ではなくて、真下着地が基本だから、走るスピード以上に足を前に出し過ぎないことだろう。

ランニングで膝関節はとても壊しやすいし、悪いフォームでは長く走ることもできない。

理屈を辿って行くと、そこには確かな理由がある。

ゆっくり楽に走るなら踵着地もいいし、フォアフットで腱を使ってスピードを出してもいい。

体の特性を活かすと楽に走れるから、がむしゃらに馬力だけで練習するよりも、目的や効果を狙った練習がおすすめだ。


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