飽きられないコンテンツを作るには?
つい最近まで、飽きられないコンテンツは「欲」に関連していると思っていた。
食欲を始め、人には衝動的に反応する「欲」があって、その心理状態を利用することがセオリーだと信じていた。
確かに、「孤独」に耐えられる人は少ない。
客観的には自分が正しいはずも、あるタイミングでそうではない結果が広く浸透すれば、どうしても心が落ち着かない。
それこそ、訴訟になれば、定期的に時間を取られて、それが年単位で続くことだってある。
「正しい」を社会的に認めてもらうことが、どれだけ大変で時間を要することなのか気づくだろう。
つまり、自身の考えや意図が正しく伝わるのは事実だとしても、それが一回であるとは限らない。
本来なら評価されるべきコンテンツだとしても、結局は支持されないまま終わってしまうことも少なくない。
YouTube が広く身近になって、芸能界で活躍を続けるタレントさんたちがどれだけ大変なのか気づく。
冠番組を持つ芸能人など、本当にひと握りだと思うし、レギュラー番組を持つことでさえそう簡単なことではない。
どうやったら、番組出演に声を掛けてもらえるのか。
改めて考えると、その解決策は見つからない。
同様に番組制作サイドも、アイデアを幾つも出して、面白い番組を作りたいと思っているだろう。
そのためには、番組のイメージに合う MCを見つけたいし、脇を支える主演者にも気を使う。
トーク番組なら、MCの進行に邪魔しない加減で、しっかりと笑いを取って欲しいし、エピソードを広げられるトーク力も不可欠だ。
時に短い時間で、話をまとめられる構築力は、芸能人なら誰しもが持っていると言っていいレベルだろう。
というのも、例えばYouTube で個人チャンネルを眺めていると、テレビ番組ではまず考えられないほど、トークに間がある。
だからと言って、喋り続ければいいのではない。
漫才のネタ作りで、最も重要なことが「言葉を切っていく作業」だと聞いたことがある。
不要な言葉が多いとそれだけ時間も使うし、聞いている方には間伸びを感じさせる。
「テンポが悪い」という指摘の多くは、ネタの方向性ではなく、無駄な言葉が多いということだろう。
事実、漫才のネタを考える芸人は、小説家にもなれる。
読みやすい文章を書くだろうし、内容もしっかりと伝わって来る。
ある意味、そんなテクニックは表に出ることではなく、芸能人が芸能活動をする時に最初に教えられることだろう。
近年で言えば、アイドルが出演するYouTube チャンネルを観ていても、一般の個人チャンネルと決定的に違うことがある。
ぶらっと散歩するだけのコンテンツであっても、それ眺めていられるのはなぜだろうか。
同じことを個人でしても、時間は持たない。
だからベラベラと五月蝿いくらい喋ってしまう。
確かにビジュアルの良さ、バックボーンとなる芸能活動がありからこそ、応援してくれるファンも多いのだろう。
ある芸能界の大御所が気づいたという話
ある芸能界の大御所が、やはりどうすれば飽きられない番組が作れるのか考えたそうだ。
そして、出した答えは「より多くの番組に呼ばれること」だったという。
つまり、一本の長寿番組に出会うには、10本100本とより多くの番組に関わりことで成せるということ。
練って練って狙っても、それが評価されるかはコントロールできないのだ。
それをベースに考えるなら、「〇〇チャンネル」を1つ開設し、その個人チャンネルで同じような内容を延々と続けても、その後にヒットできるかは誰にも分からない。
ただ言えるのは、コントロールできる部分で飽きられるきっかけを作らないようにすることだろう。
売れっ子タレントのように、開設して一ヶ月後には人気チャンネルなることもあるが、一般的には売れない方が多い。
既に物珍しさはYouTube には無いし、同じようなテーマを扱うチャンネルも複数ある。
人気のチャンネル、見本にできるチャンネルがあるなら、どうして支持されているのかを分析するのは必須だろうし、さらに違いを出す工夫を加えて試してみるしか無い。
YouTube が考える次のステージとは?
ひと昔前、動画のような大きなデータをインターネット上に残すには多額のコストが必要だった。
ホームページを開設する時に、その容量が〇〇Mbyte 以下という時代だってあった。
世界中ユーザーがアップした動画データを維持管理するのがどれだけ大変で、言い換えればそれを可能にしたビジネスモデルなど思いついてもできるものではなかっただろう。
ネット広告を掲げてスポンサーを募り、さらにはその広告を掲載できる枠として初期投資が掛からない仕組みを作りYouTuber を集めた。
視聴回数を集められれば、それまででは想像できないほどの収益が見込めると気づき、さらに人気YouTuber の後を追うように人が集まって行く。
つまり十分に最初のYouTuber 集めは目的を達成し、広告枠に適したコンテンツを持つチャンネルだけを残したいと考えるのは自然な流れだ。
これまで稼げていたYouTuber が思うように視聴回数を伸ばせていない背景に、トップページへの掲載率が低下したこともあるだろう。
つまり、より最適なコンテンツを優先に紹介していくと、「ミス」があると判断されたコンテンツは後に回される。
チャンネル登録されていても、定期的に視聴してくれるほどなら別だが、目に触れなければ見ないレベルなら視聴されないままに終わる。
コンテンツの完成度よりも、より目につくところに掲載されることが重要だったのだ。
その意味では芸能人が運営するチャンネルはコンテンツとしても完成度が高い。
テレビというコンプライアンスの厳しい環境下で、活躍しているのだから当然だろう。
言い換えると、セオリーだった「欲」の要素を減らし、より「視聴者を惹きつけるコンテンツ」が求められるようになった。
既にYouTube にはそんな芸能人が集まり、それ何も知らないこみちのような個人チャンネルが勝てるとは思えない。
「YouTube で稼げなくなった」のではなく「YouTube が次のステージに移行した」ということだろう。
稼ぎたいと思うYouTuber はたくさん集められたから、より魅力的で健全なコンテンツを求めているとしても当然だろう。
知名度があると有利ではあるが、露出されないようになれば、じわじわと忘れられてしまう存在になって行く。
先にも紹介した大御所が、スタッフへの気配りや仕事への誠実さを忘れないようにしていたというのも、考えれば当たり前で、個人の才能だけで売れたりはしない。
応援してくれるファンがいて、所属事務所の支えがあって、番組出演をへて人気が増して行く。
「飽きられないコンテンツ」を考える前に、基本となるポイントを見返してみるのもありだろう。
「楽しそうにしている」とか、「観ていて癒される」とか、実はとってもシンプルな理由で、視聴が始まり、長く支持してくれるファンになってくれたりするのではないだろうか。
間違えても「自分の才能だ!」などと誤解してしまったら、やがて世間から取り残されてしまうだろう。