「落とす」と「引き上げる」の違い
ランニングの体重移動で欠かせないのは、「乗り込み」です。
つまり、空中移動が終わり、地面に落ちて来たタイミングで、再び足の裏に体重が感じられる瞬間を指します。
トップアスリートであれば体重の5倍の力を受け止めるとも言われ、言い換えるとそれだけ大きな力にも対抗できる備えがなければフォーム自体が潰れてしまいます。
だからこそ「乗り込み」では体重の乗せるという動作よりも、瞬間的に大きな力が掛かった時に、足の関節をしっかりと固めて乗り込まなければいけません。
以前にも触れましたが、足首関節は固めるべきで、決して乗り込み時に地面を足首を動かして蹴ろうとは思わないことです。
市民ランナーの方でも、いいペースで走っている時には体重の3倍以上を支えるので、それだけの重さを効果的に押し切れるのは足首関節ではないからです。
股関節を使って走ることが基本フォームの原点ですが、それは乗り込みを正しく行うために欠かせないポイントです。
そして、乗り込みを終えた後、「足を引き上げる」または「振り出す」動作へと移ります。
表現の違いは、重心位置と足の関係の違いを指しますが、フォアフットで走る人は比較的引き上げるように感じ、踵接地で走る方は振り出すように感じるでしょう。
重心位置が全体的に前方にあるフォームの場合、接地した足は後方に残ります。
つまり、フォアフットで走る人なら、いかに素早く足を引き上げられるかが大切で、その素早さがケイデンスの向上、ペースアップと繋がります。
一方、踵から接地する人は、重心よりも前に接地ポイントがあるので、引き抜くというよりも前に振り出す感覚になるでしょう。
ただこれらの言葉の使い方は個人的な感覚の話なので、フォアフットの方でも「振り出す」という印象を持っても不思議ではありません。
そこでこの記事では「振り出す」という表現にここから先は統一します。
ランニング中、「振り出す」感覚を意識するのは、後方に足が残ってしまわないようにしたいからです。
足が残ると、反対側の足が体の前にあるので、接地時にブレーキ効果が出て、上手くリズムに乗って走れなくなります。
それを避けるあまり、「振り出す」感覚を強く感じるのです。
一方で、既に踵接地にはならず、しっかりフラットまたはフォアフットで走るランナーなら、足が残るということが少ないはずです。
つまり、足は既に前に振り出されているので、さらに次の動作となる「足を落とす」という動きに意識が集まります。
下方向に「落とす」には、膝頭がしっかりと前に持ち上がった状況から下がって行くので、「振り出す」が完了し、定位置まで引き上げられていたわけです。
「落とす」を意識して走る場合、乗り込み動作を強く行うことができます。
その後に、また「振り出す」動作になるのですが、一連の動きの中で、どこに意識を持つのかで、ランニングのリズム感が変わります。
振り出す感覚が無いままの「落とす」は…
注意しなければいけないのは、「落とす」という意識は振り出す感覚ができてこそです。
つまり、「落とす」を意識し過ぎて、フォーム自体が崩れてしまうと、前から下方向に向かって強く地面を蹴ってしまい、太もも前側の筋力を使って走ってしまいます。
上り坂や向かい風の中を走る場合に適した動きですが、思うようにスピードに乗り切れないフォームになってしまいます。
この時のフォームも覚えておいて損はありませんが、リラックスして楽に走るには落とした足をいかに素早く振り出せるのかで疲れないフォームになるのかが決まります。
つまり早い段階から「落とす」を意識よりも、「振り出す」ができるようになってから意識を変えた方がいいスムーズに移行できるでしょう。