市民ランナーのステップアップ
俊足の野球部員と陸上部員が短距離走をすると、30m、50mくらいまではいい感じで競い合うのに、そこから100mまでになると差がついてしまいます。
その理由は単純で、短い距離での「足が速い」とは、太ももを下ろすスピードの速さで決まります。
一方で50mを超える距離になると、太ももを下ろす動作が段々とキツくなり、一気にペースが落ちてしまいます。
それは当然の現象なのです。
一次加速と二次加速という言葉が短距離走のテクニックにあって、太ももを下ろして走ることを一次加速と呼びます。
二次加速は、一次加速で獲得したスピードをいかに減速させないで走るのかというテクニックで、一次加速では落ちてしまう「スピードの維持」に目的が変わります。
加速しているとは、地面に対して力を加えられているということ。
スピードが速くなって、足の回転が間に合わなくなると地面を押すことができなくなります。
それはどんなに速いランナーでも起こる限界点があって、そこがトップスピードです。
つまり、一次加速で得たトップスピード以上に速く走れないとは、もう地面を押すことを考えても仕方ないということ。
もしも押せたとしたら、それはトップスピードから減速しているからです。
つまり、二次加速の場面で一次加速とは違う意識が「地面を押そうとは思わない」ということ。
そうではなく「減速させない」ことだけを考えましょう。
加速が地面を押すこととするなら、減速させないとは、接地のタイミングでいかにスムーズに着地して足を抜いていけるかです。
地面に触れて離れるまでの動きを素早くしたいのです。
単純に考えて、3秒間地面に接する場合と1秒の場合、どちらがスムーズに着地できるでしょうか。
という意味で、接地時間を短くするようなフォームほど、減速させないで走るという二次加速の目的に合った走り方です。
「地面を押している感覚がない」とはどんな感じでしょうか。
例えば、体が前に時速20キロで進む時、接地した足を後方に時速20キロで押しても、全く押せた感覚にはなりません。
地面から離れる体のスピードが速いので、同じスピードで押しても影響がないからです。
そもそもトップスピードになっているので、25キロや30キロのスピードで押せるなら、トップスピードも上がっているはずなので、後方に押す意識は全く考えなくても大丈夫です。
では何を意識しているのでしょうか。
それは、膝と足首の関節を固定させて、前に進む体をそのまま送り出せばいいのです。
関節を動かさないのは、関節を動かしても限界まで高まった推進力を更に加速させることができません。
だとするなら、無駄に動かすよりも、ただ体を前に流すことだけに専念すればいいのです。
そして、前に流すためには、接地した時に足を前に倒し込めればいいのです。
とは言え、スムーズに倒し込むには、接地した足の位置が体に近い場所でないと、倒し込むまでの待ち時間ができてしまいます。
接地は前ではなく、できるだけ真下。
接地したら、そのまま上げられるくらいのテンポが理想です。
踏み込み(体重を支え)ながら、すぐに足を浮かせてしまう。
その動きがしやすいポジションを見つけることが、陸上部員っぽいフォームの肝だと思います。
運動神経が良くて、足が速い人のフォームを見た時に、太ももの回転が早いのは分かります。
でも、陸上部員っぽいフォームではないと思ってしまうのは、肝心な足の入れ替えポジションで走っていないからでしょう。
つまり、陸上部員っぽいフォームとは、トップスピードの速い遅いで決まるものではなく、トップスピードのキープ力に違いがあるのです。
そしてランニングではこのスピードキープ力が重要なので、一次加速で限界を下げて持久走する場合と、二次加速のテクニックでキープ力を発揮する場合が考えられます。
例えばこみちの場合、太ももを下ろすフォームで長く走ろうと思うと、キロ5分ペースあたりが上限で、できればキロ5分20秒、40秒くらいが継続しやすい目安になります。
一方で、二次加速のテクニックを使うと、キロ4分20秒くらいが基準で、調子次第でキロ3分40秒くらいまでが上げられる限界になります。
ではなぜペースがこれほど変わるのかというと、一歩ずつしっかりと加速させる一次加速のフォームでは、持てるパワーを出し切ればすぐに消耗するので、どうしても力を抑えています。
なのでどうしてもキロ5分ペース以上はキツく感じます。
一方で二次加速のテクニックを使うと接地でパワーを使わないので、足の入れ替えだけを行います。
別の視点で見ると、一次加速のフォームではストライド幅がパワーの出し方で大きく変化しますが、二次加速のフォームではトップスピード時のストライド幅を楽に保つことができます。
実際、こみち自身もストライド幅が130センチや140、150センチで走っても、100センチの時と疲れ方が変わりません。
と言うのも、足を入れ替えているだけなので、地面を蹴ってジャンプしている訳でもなく、一次加速のスピードをキープさせているだけです。
こみちの場合、一次加速でストライド幅が180センチくらいが上限で、そこから少し下げた140センチくらいまで加速して、二次加速のフォームで、足を入れ替えてランニングを続けています。
キロ3分ペースでも、楽にタイミングを合わせられる時もあれば、キロ4分がキツく感じる時もあります。
でも時々、キロ5分ペースがとてもキツい時があって、それはそもそもタイミングを合わせるフォームではなく、一次加速の時点で足が動いていないからです。
そんな体調の時は無理して走っても意味が無いので、そうそうに休んだ方がいいでしょう。
スピードを保つために、足をスムーズに入れ替えるフォームが身につくと、キロ5分ペースの壁がすんなりクリアできるとおもいます。
今朝もキロ3分20秒ペースで心地よく走れたのも、そのテクニックを使っているからです。