ランニングで「お尻」を使うのはなぜか?という話

 そもそも「太もも」を使ってもいいの!?

約10ヶ月のランニングで気づいたのは、どうやら太ももを使って走ると歩幅分しか進めなくて、お尻を使うと空中移動できるので同じエネルギーでも一歩が大きくなるということです。

つまり、走る距離が100mでもフルパワーでスタートからゴールまでエネルギーを無限に出し続けることはできないので、短距離走の練習ではスタートや中間加速、フィニッシュといくつかのパートに分類して効率的に走ることでタイムアップを狙っています。

50mや30mという短い距離になれば、どれだけパワーを使って体重という重さを前から引っ張ることでも大きな問題にはならないので、太ももだけで走ってもいいということになります。

しかし、2キロ、3キロと長い距離になってしまえば、もう前に進むために太もものような前で引っ張る筋力だけでは持ち堪えられません。

そこで、考え方を変え背中側のお尻を含む筋力も活かして、効率的に走れないかということになります。

お尻を使ったランニングの特徴は、足を前後に開いた歩幅以上のストライド幅で走れること。

(とは言え、太ももを使ったランニングでも、厳密に言えば軸足側の筋力も使うので、割合が違うだけで完全に区分できるものではないのですが…)

現時点でのこみちの個人的な見解としては、「太ももを使ってはいけない」とは思いません。

むしろ使えるなら使うべきですし、引っ張る意識が強い短距離走であっても、スタートから数歩以外は、太ももだけで走るとも思っていません。

短距離走でも中長距離走でも、静止状態から動き出す時は、強い力で引っ張ることが効果的で、例えば短距離走のスタートでは最初の2、3歩目までは膝頭を上まで引っ張るよりも、地面にするくらいの低さで、いかに速く一歩を出せるかが問われています。

多分、低い姿勢でスタートするのも、静止状態からでは体の後ろ側から力を発揮させるよりも効果的に使えるからでしょう。

中長距離になると、最初のスタートダッシュの差は後からでも挽回できるので、手を地面について走るクラウチングスタートようなことまでは必要ありません。

短距離走の中間加速の技術やフィニッシュに向けた巡航速度の維持などでテクニックが重なると言えます。

足を出すタイミング(ケイデンスが210spmを超えて)を上げて行くと、もう足は高速で回し続けることしかできません。

つまり、押すとか蹴るとか、引っ掻くとか、余計な動きを加えた時点でケイデンスは上限を迎えます。

より速く走るという意味では、いかにケイデンスを200spmから220、240と上げることの方がタイムアップに繋がるのかということでしょう。

太ももを使って前で引っ張っていたフォームの人が、体の裏側の筋力も使うようになれば、瞬間的にはキロ1分台のペースで走れてしまうでしょうし、それをキロ3分ペースまで落とせば、その継続時間をどこまで長く続けられるのかという課題に変わります。

つまり、ケイデンスの数値が最高で160spmや170spmのような低いままのランニングでは、どんなに走り込んでもスピードアップの効果は期待できないのです。

フルマラソンやハーフマラソン、10キロ走のような距離走で結果を求めるなら、スタミナに加えて、どれだけ効率的にパワーを出し続けられるのかも練習メニューに加える必要があるのです。

つまり現時点での結論は、太ももだけでは長い距離を走り切れないので、背中側の筋力も有効に使って、前に進むフォームを見につける必要があるのでしょう。

お尻を使ったランニングとは?

お尻と太ももという部位でイメージするから頭が混乱するのです。

推進力を得るという目的で走るのですから、体をどう使えばより前に進めるのかを考えましょう。

つまり、推進力をより高めるには、前に出した太ももで地面を蹴り、後方の重い体重を引っ張る方法では非効率で、体力がすぐに失われてしまいます。

かと言って、背中側の例えばお尻だけを使って走れば全て解決できるのかというとそんなことはありません。

ポイントは足を前後に開く動作と地面に接しているタイミングをどう推進力に転換できるのかということ。

つまり、軸足に対して前側の足をいかに素早く振り出して、そこで太ももが地面を蹴るのではなく、振り出すタイミングで絶妙な角度で体を空中移動させて、再び落下した時に勢いを妨げないように進み続けることで、無駄なスタミナを使うことなく走ろうとしているのです。

お尻を使って走るとは、お尻だけを使うことではなく、足で走るというそれまでのイメージを取っ払い、体を使って走るという意識に変える一歩だとも言えます。

そして、どうやらお尻を使ったフォームとは、ゴルフのフォームでは問われる股関節がポイントです。

股関節部分でタメを作ることで、ランニング中の上下動を上手く受け止めます。

これが膝などで受け止めると、長い時間走るに連れてその圧迫から膝関節が悲鳴を上げてしまうということです。

長く連続する強い負荷に耐えるためにも、膝よりも耐久力のある股関節を使うというのも理にかなっています。

実はこの前、ランニング中に遊びで膝関節を使わずに、股関節だけを動かして走ってみました。

ストライド走法でもピッチ走法でもなく、足を伸ばして股関節だけを前後に動かして走ってみたのです。

結論から言えば、ケイデンスが230spmくらいになり、キロ3分後半のペースで走れていました。

ここで得たことは、股関節だけを動かし膝や足首を固定させても、ケイデンスさえしっかりと上げれば市民ランナーや趣味で走るランナーであれば十分な速度が出ていると言えます。

お尻を使って走るとは、太ももを全く使わないフォームではなく、着地から足が離れるタイミングで体の後ろ側をしならせる動きとも言えます。

「しなり」とはなにか直接的にイメージが難しいかもしれません。

例えば、直立した状態で膝関節も足首の関節も使わずにジャンプするなら、腕や肩甲骨周り、背中のたわみを使います。

ということは、「お尻」を使うランナーで、腕振りに興味や意識が無い人はいないでしょうし、肩甲骨のスムーズな動きにこだわらない理由もありません。

そんな風に考えていくと、手をしっかりと強く握ってしまえば、腕にも力が入り、腕振りに悪影響が出ると思います。

だからこそ、ランニング中は手を軽く握っておくべきですし、言ってしまえば体から離れた部位ほど、無駄に力を入れる必要がないということにもなります。

結論的に言えば、「お尻」を使うランニングは、膝関節、足首の関節の角度を変えないフォームです。

例えば、軸足の膝関節が曲がっていたとしても、それだけで悪いフォームとは言えません。

ポイントは膝関節を積極的に使ってランニングしていることに注意したいのであって、例えばケイデンスを極限まで上げるために軸足の脛から前に倒れることはテクニックの一部であり、足を素早く振り出すことにも通じます。

つまり、いつまでも膝関節が曲がらずに軸足が後方に伸びたままになっていたら、それだけ前に振り出すタイミングが遅れ、しかも可動域が広くなるのでケイデンスが落ちてしまい、結果的にスピードは下がります。

理想的なフォームという意味では、いかに瞬時に高い推進力を得られるかが大切で、その意味では膝関節の曲げ伸ばしは貴重な力の損失で、できるなら足は着地したらすぐにでも前に振り出したいくらいです。

だからこそ、着地した軸足はどれだけ無駄な動きを無くして次の一歩に繋げられるのかが目指すべきところで、例えばケイデンスを上げるためなら膝関節を曲げて固定してもいいはずです。

今にして思う初心者と中上級者の違い

ランニングの基本として効率的なフォームの指標としてケイデンスは180spm前後がオススメと言われます。

しかし、ランニングスペックを高めるためには、股関節を動かすフォームでケイデンスを200spm以上に高めることが大切です。

ただ、ランニングを始めたばかりでは、ケイデンスが160spm前後ということも多く、初心者ランナーにとっては股関節から動かす意識と同時にケイデンスを180spmまで上げることが最初の目標になります。

ただ、この二つのポイント(股関節を使うこと、ケイデンス180)は、普通に走っていてもできるようになりません。

特に股関節を使うためには、それまで意識して使っていなかった関節の可動域を広げる必要があって、ストレッチ体操などランニングとは異なるアプローチで股関節を刺激しなければいけないからです。

ランニング前に、何となく準備体操をするのではなく、股関節をしっかりと動かせるためにどんな運動が役立つのかを知ることで、より効果の期待できる準備体操になります。

ある意味で中上級者になると、準備体操の重要性やランニングのペースや距離に対する意識が高くなって、今は何の目的で走るのかを考えているでしょう。

初心者から見た時に中上級者とは、よりケイデンスが高くまで上げられる人で、しかもスタミナの使い方も上手な人です。

結果、中上級者はランニングのペースが速くタイムもいいのです。

そう考えると、初心者が目指すべき練習のポイントとは、股関節を使ったお尻を使うランニングフォームを身につけ、さらにそのフォームに慣れることです。

例えば理想的なフォームで1キロなら走れても、それ以上ではフォームが崩れてしまうとするなら、その持続距離を伸ばすのが練習です。

またキロ6分なら保てても、キロ5分ペースでは崩れてしまうなら、そうならないように体幹を鍛えるなどで克服することも練習です。

股関節や体幹を使う理想的なフォームを初心者の段階で完成にマスターするのは不可能です。

上手くなるに従って、段々とフォームを修正しながら上達していくからです。

しかし、漠然とランニングしていても速くも効率的にも走れるようにはなりません。

ランニング歴が長いランナーと中上級者のランナーは同じ意味ではなく、中上級者と呼べるランナーは股関節を意識したフォームで走りますし、自身のスタミナをより効率的に使って走っています。

ゆっくり走っているように見えて、実は速く走って見えるのも、手足の動きでスピードが決まるのではないからです。

やはり速く走るにはそれだけの理由があって、手足ではない部分がそれだけ多く補うことで、長い距離や時間でも手足が疲労し難いフォームで走れているということでもあります。

ランニングスペック向上を目指したランニング

今、こみちは普段のランニングでキロ3分台のペースで走ることはできます。

特にスタートダッシュから一気に前屈みのままトップスピードに到達させるのではなく、通常のランニングから一気に加速させてのキロ3分台ペースができるまでになりました。

これができるようになった理由は、足をいかに素早く回せるかが変わったからで、キロ4分ペースで回すタイミングが精一杯ではないので、一瞬でキロ3分ペースに切り替える余裕ができたからです。

さばきが上手くなれば、トップスピードが変わります。

さばきには、太ももを使って前に振り出す力も必要ですし、腰のあたりで感じるタメも使います。

今はまだキロ2分30秒が限界で、ランニングではキロ2分後半まで、ケイデンスでは214spmくらいまでがリミットになります。

それ以上のパワーを出すには、今まで以上にしっかりと柔軟体操から始めないと、体を壊すリスクが高まります。

つまりするべきことは分かっていても、その練習に使える時間がとても短くて、むしろその前段階の準備が増えて来たとも感じます。

今、左ハムストリングを傷めていて、やはりパワーをセーブしてランニングしています。

それでもキロ2分後半で走れますが、そんな方法を続けてしまうとハムストリングが完治しないままになり、結果的に自身のランニングスペックが向上しなくなってしまうでしょう。

だからこそより高いレベルで練習するためにも、いつもフルパワーの練習ではなく、筋肉や体力とのバランスを考えて、メニューを組むことが必要です。

スタミナ強化が目的なら、心拍数を高めに設定し、その持続力を鍛えることが必要です。

またトップスピードを向上させたいなら、強い力を発揮させるための準備をしなければいけません。

3000mの距離を90%のパワーで走ってしまうと、翌日にも疲労が残ります。

そのまま同じようなメニューを繰り返すと、いきなり筋肉が損傷するようなケガを招きます。

強いパワーを長時間続けるのは負荷が大きいので、練習ではどんな効果を狙って取り組むのかをしっかりと考える必要があります。

例えば今のこみちなら、同じダッシュ練習でも、限界のキロ2分30秒を縮める強負荷な練習は少なく、80%や70%でしっかりと動きの確認をしたり、遅れがちなポイントだけを繰り返し修正したりと、トップスピードに繋がる準備が大切です。

またキロ5分ペースでどこまで距離を押していけるのかとか、キロ5分30秒でもっと長い距離を走り続けることでスタミナ強化という練習も組めます。

競技志向ではないので、本来なら楽しく走れれば良いのですが、それこそお尻を使って走るフォームを身につけることで、走ることが楽ですし楽しくなりました。

これが太ももで掻くだけのフォームでは、長く走るのが楽しくはなりません。

キロ5分ペースくらいまでなら、どんなフォームでも到達できるでしょう。

また短い距離であれば、フォームなど意識しなくても走れてしまう人がいます。

しかし、フォームを理解すると、多くの人がキロ4分ペースで20キロとか30キロ、フルマラソンの距離でも走れてしまいます。

なぜなら、ケイデンスは180spmまで上げれば十分ですし、スタミナ練習が中心だからです。

これがキロ3分ペースで走り切るとなれば、そこに到達するための準備が変わりますし、何よりも練習時間が一気に増えるはずです。

サラッと近所を好きに走っているだけでは、キロ3分ペースで10キロ走れるとは思えません。

逆に焦って無理した時に、ケガをして走れなくなるリスクの方が心配です。

つまり、どんな目的だとしても、お尻を使って走るのはできた方が楽しいですし、そうすることでランニングという趣味が面白味を持ちます。

ランニングをして背中に疲労感を覚えたり、接地感の違いに興味が出て来たり、走るといってもいろいろな気づきがあるので、それこそが長く楽しむポイントだと思いました。

最近、もう少し早くから陸上競技に興味を感じていたら、100mで11秒台を狙ってみたいなと思ったりします。

ただ現実的には、それだけ大きなパワーを出すことに戸惑いを感じますし、練習の多さや課題などを考えると今更感を感じます。

まぁトップスピードでキロ2分20秒にどこまで近づけるのかが良いところでしょう。

そして、焦らずにハムストリングを治して、また楽しく走れるようになりたいです。

無理をしないで、少しずつ楽しむくらいがちょうどいいと思うので。



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