時代は「バラエティー」を求めている!?
例えば格闘技の試合で、ここ数年はコロナ禍も重なり国内のトップ選手たちを中心に対戦カードが組まれていました。
そんな中で大晦日に開催されるライジン40では、アメリカのメジャー格闘技団体からトップ選手を招き、ライジンとの対抗戦が行われます。
かつて、日本ではPRIDEと呼ばれる格闘技団体があって、大晦日にNHKの紅白歌合戦と視聴率で争っていたわけですが、そんなかつての映像もYouTube で視聴できるのはありがたい限りです。
その時代の中心はヘビー級と呼ばれる大型選手たちで、もちろん日本人選手が多いライト級以下でも盛り上がっていました。
ただ、海外から招かれたヘビー級の選手たちは、その存在だけで迫力がありますし、格闘技以前に選び抜かれた人たちでもあります。
イベントの最後に組まれるのは、やはりそんなヘビー級の試合でした。
つまり、当時は同じ格闘技選手であっても、その体格の違いからメインイベントに抜擢される日本人は珍しく、それだけ超えられないものがありました。
そんなかつてのPRIDEを久しぶりに見ると、今とはエンターテイメントに対する考え方が違っていたと改めて実感します。
なぜなら、現代のエンターテイメントは「本格派」というよりも、「親しみやすさ」が求められているからです。
エンタメとは言いつつも、バラエティーよりになったのでしょう。
かつては「本格派」一択だった!?
プロスポーツ選手の中には、幼少期から英才教育を受けて、その人生の大部分を注いで来た人も珍しくありません。
サッカーやゴルフなどで、そんな逸話も耳にします。
また、プロの演奏家やバレーダンサーなども英才教育が当たり前でしょう。
では、そんな本格派とは異なり、成人してから始めた人と何が違うのでしょうか。
すぐに思い当たるのは、「柔軟性」ではないでしょうか。
パワーを補うことは後からでもある程度可能ですが、身体の柔軟性は幼少期から始めた場合と成人してからでは異なります。
ワールドカップで見たメッシ選手の柔らかなシュートを観て、でもそれをいつまでも真似できないのは、きっとあの足首の柔軟性を再現できないからだと思うのです。
緊張すると人は身体を強ばらせます。
より細やかな筋肉の動きができません。
しかしながら、メッシ選手はとても柔らかなシュートが打てます。
つまり、本格派と呼ばれる人には、後からでは追いつくことができない才能を有しています。
それは大柄なヘビー級の選手にも言えて、体格で劣ることが多い日本人では骨格的にも不利になるからです。
一方で、例えばライジンでは、ヘビー級という枠よりも、もう少し軽量のライト級、さらに軽いフェザー級、バンタム級、フライ級が盛んです。
より日本人選手にも参戦しやすいクラスが主流になったとも言えますし、時代がかつてのような「真似できない本格派」を望んでいないのかもしれません。
さらに言えば、無敗の選手同士が最強を決めるというようなワクワク感が減った気がします。
負けても次に勝てば五部。さらに次戦で勝てば上に行ける。
「そんな何度でもやり直せる」ことが浸透しています。
現代の興行では、1つの試合がまた再現できてしまうことも、バラエティー的に思える部分でしょう。
ベラトール対抗戦の意義
大晦日に開催されるベラトール対抗戦ですが、次回も実現するのか今は誰にも分かりません。
つまり、今回の試合結果が、その後ずっと長く語り継がれるかもしれません。
だからこそ、選手たちは今まで以上に多くの想いを背負って、試合に挑みます。
対抗戦5試合に全敗すれば、それこそメンツは潰れるでしょうし、参加選手にすれば負けてしまえばその後もずっといじられるネタになるでしょう。
言うなれば、そんなプレッシャーに恐れた選手はそもそも手を挙げることができません。
やり直せることに慣れた、もしくは失敗してもメンツが保てるという流れに慣れてしまうと、ベラトールのような強豪選手とは負けたことを考えて戦えないでしょう。
一方で、YouTube でも人気の格闘技イベントでは、個人の生い立ちのような部分に「親しみ」を感じ、逆境から這い上がる生き様に心躍らせます。
なぜなら、それだけ現代社会が勢いを失い、「本格派」がもう幻想でしかないからでしょう。
言うなれば、シナリオがある映画やドラマと同一の並びに「本格派」のコンテンツが存在します。
思えば、ベラトールとの対抗戦で明らかになるライジンのトップ選手の真の実力も、もしかすると世間的には大きな関心事ではないのでしょう。
今や格闘技も一般人が目指せる職業!?
PRIDEの試合を観て、格闘技に興味を持つ人もいたはずです。
しかし、自分がヘビー級で参戦できるとは思わないでしょう。
なぜなら、あまりにゴールが遠く、それがほとんど不可能だと分かるからです。
ところが、YouTube によってそれまで格闘技に触れていなかった人でも、ルールを決めて試合に参加することができます。
大前提として、本格派を目指している訳ではないからでしょう。
むしろ、現代では人気や知名度を上げることで、YouTube でも稼ぐことができます。
つまり、格闘技選手としてステップアップを目指すよりも、人気者として活躍し、タレント業にような職業にしたい人が増えたのではないでしょうか。