テレビ局が試みるYouTube チャンネルの成功例

 テレビ局の動画コンテンツは究極の見本!?

「ABCテレビニュース」という朝日テレビ報道局が運営されているYouTubeチャンネルをよく視聴しています。

ある回では、定点観測という触れ込みで、真夜中の本屋に来店する客たちを取材するというもの。

13分ほどの動画ですが、書店の簡単な社歴や深夜営業に至る背景にも触れ、なぜ夜に本屋を訪れたのかをインタビューしています。

これ、一般のYouTuber にできそうで、できない内容だと思います。

海外で街頭インタビューし、その国の文化や日本について質問しているチャンネルもありますが、「取材」という位置づけで行う方法はテレビ局ならではのノウハウだといえるからです。

「すいません。今、何を探していますか?」

テレビ局の取材陣だからこそ聞けますが、昨今、一般人がこれをすると大きなトラブルにもなるでしょう。

「ぶらっと本を読みたくなって」

「こんな時間にですが?」

「はい、子どもに夕飯を食べさせて、少し時間ができたので…」

「なるほど。で、どんな本を探していますか?」

人気作家の新刊をカメラに向けて、「面白そうな内容で、ちょっと読んでみたくなって…」と答えてくれました。

内容は少し変更しましたがこんな感じで、深夜に来店した客に声を掛けて、「本屋」というきっかけからそれぞれの暮らしぶりを知れます。

情報としての「人気ランキング」みたいな内容ではなく、それこそ「一般の方の日常」を垣間見る内容になっています。

「ABCテレビニュース」公式YouTube チャンネルより

テレビ局の動画は何か違うのか?

個人のYouTuber が、一人称形式(撮影者目線)になりやすいのに対し、例えばこの真夜中の本屋のような動画は三人称形式(撮影者ではない誰か)であり、人気YouTuber ほどこの三人称形式になっていると感じます。

つまり、一台のカメラで一方向からの撮影が多くなると、それだけ一人称形式になりやすく、例えば料理や小物作りなどの動画で、真上から手元ばかりを映してしますと、世界観がそこだけになってしまいます。

一方で、同じ料理や小物作りでも、オープニングで演者が挨拶をし、これから始める内容を紹介すると共に、「どうですか? 美味しそうでしょ?」と先に完成品を簡単に触れて、「では早速、作っていきましょう!」とキッチンへと移動します。

最初の正面アングルとは別に、移動する姿を引きで撮影した後、改めてキッチン前に立って、「今日の料理は、秋にピッタリですよ。少しピリ辛なので、箸が止まりません」などとこれから作る料理をもう一度、簡単に触れて、今度は手元を映すカメラに切り替わります。

視聴者目線で、何をどんなタイミングで伝えると分かりやすいのか、飽きないで観られるのかを考えると、どうしてもワンカメで最初から最後までを撮影するのは無理があります。

もちろん、それだけ手間が掛かるので、個人撮影では難しいでしょう。

しかし、テレビ局の動画をみると、そこに一切の手抜きがありません。

言い換えると他局も同じように参入すれば、それが当たり前で、そうしない動画とは区別されるでしょう。

「車旅」チャンネルにも言えること!?

テレビ局だけではなく、雑誌などを見ても、そこにはプロとしてのノウハウがたくさんあって、特に手間が掛かる部分の「深み」で個人チャンネルではできないことをしています。

あるキャンプ系雑誌を眺めると、最新のキャンプグッツをアウトドアのショップ店員が紹介し、また別のページではキャンプ慣れした一般ユーザーの自分好みのテントメイキングなども触れています。

キャンプ歴20年越えのベテランもいれば、昨年から始めたビギナーや、お洒落系のキャンパーなど、幅広い読者層が楽しめます。

もちろん、人気のキャンプ場の紹介や、近隣の観光スポット、さらにはQ&A的に「こんな行為はNG」みたいにマナー紹介もあったりします。

例えばこれくらいの内容で一冊800円だとしても、個人で同じことが真似できるはずはありません。

そうなった時に、テレビ局や出版社が本格的に参入し、YouTube もタイアップするようになれば、もうトップ画面に個人チャンネルが表示されないかもしれません。

商品販売の何割かを宣伝費に掛けるのが常識とするなら、本来ならYouTube チャンネルの運営は製作費よりも宣伝費(おすすめに表示される)ことが重要です。

どのような仕組みなのか分かりませんが、今はまだ個人チャンネルもたくさんおすすめされていますし、見ていなかったチャンネルが紹介されることもあります。

それがより内容的に完成度が高いチャンネルを優先されるようになったら、個人チャンネルを運営はそれこそ中小企業のように工夫をしてコストを抑えつつも大手にはできない内容を狙うしかありません。

各世代に人気のあるタレントをピックアップし、タイアップされたキャンピングカーで旅動画を作られたら、もう正攻法では勝てないでしょう。

無料だから道の駅で、人気だから車中泊。

キャンピングカーを手に入れたら日本一周。

どう考えても、数年前なら勝算もあった内容ですが、これからこの方法でチャンネル運営は厳しいと思います。

「なぜ、旅をするのか?」

「何を視聴者に伝えたいのか?」

「どう他チャンネルと差別化できているのか?

圧倒的に演者に魅力があるパターンで成功されたチャンネルはありますが、シリーズ化して「車旅」を作り込んで成功しているケースってあるのでしょうか。

旅先だからこそ、ソフトクリームも美味しいのであって、全国の有名店との違いを改めて比較してまで、掘り下げるものではないでしょう。

もしもそこにこだわるなら、それこそ製造工程や放牧地まで足を運んで取材するくらいの意気込みが欲しいところです。

正直なところ、YouTube ももう個人がチャンネル運営できる状況ではないのかもしれません。

知名度のある一部のYouTuber 以外は、視聴回数も下がってしまうでしょう。

でも、好きなことを共感できるプラットフォームとして、YouTube はありがたい存在ですし、例えば「車中泊」をするのが楽しい人は、そんな動画をアップして行けばいいと思います。

一発当てて、稼ごうと思うから悩むのであって、楽しむために動画撮影をするなら、これからもYouTube があることで生きる楽しみになるはずです。

こんな記事はいかが?