「車旅」が富裕層だけに許された旅だと分かる話

 「車旅」を続けるためのコスト

車旅でどんな旅をするのか想像する前に、その旅のコストを試算してみよう。

無料で宿泊できる「道の駅」は便利ではあるが、安全性や安眠を考えると必ずしも最善策とは言えない。

場所によってはビジネスホテルも一泊数千円で利用できるし、有料のRVパークなら電源の確保やゴミ処理も任せられる。

つまり、旅の全てを無料だけで繋ぐと、「コスト」は抑えられるけれど、「車旅」として有意義な思い出にできるかは難しいところ。

例えば、YouTube チャンネルを運営し、車旅の様子を公開するにしても、毎回が道の駅でほぼ車内の様子を発信するだけなら、視聴者にとって出演者の様子だけが見どころになってしまう。

それでもビジュアル的に秀でた人なら人気を稼ぐのだろうけれど、中高年のこみちのような人では選択できない方法だ。

ざっと調べると、RVパークを一泊利用すると3000円くらい掛かる。

月額で9万円。

賃貸物件として考えると、割といい値段だ。

しかも自宅と両方を維持するなら、単純に2倍と考えてもいいだろう。

つまり、住居費だけでも18万円掛けないと、車旅を始められない。

食事や洗濯、入浴費も自宅以上に割高になるから、リーズナブルな旅でも20万円、観光やグルメも楽しむなら30万円くらいを確保しないと思うような旅にはならないことが分かる。

もちろん、ガソリン代や車両代、保険や整備費などは別途必要だ。

旅をしながら稼ぐとしても…

折角の車旅なのに、生活費を稼ぐために車内でずっと仕事をしているのは本末転倒だろう。

ライターや文章作成の請負いで月額10万円を稼ぐには、一文字1円として10万文字、1時間で2000文字を打ち込めば50時間の労働で稼げる。

つまり、平日20日くらいは朝9時から始めて昼までで終えるイメージだ。

残り20万円をどう稼ぐのか。

その意味ではYouTube で収益化し、稼ぎの足しにできればありがたいだろう。

一方で取材や撮影、編集作業に追われることにもなるから、空いている午後をどこまで費やすのかは判断が難しい。

今では収益化に必要な登録者1000名以上と1年間での総再生時間4000時間以上をクリアする必要があるけれど、昨今の車旅チャンネルの勢いが低迷している印象もある。

というのも、自分の楽しむ姿を公開して視聴される人はスター級で、視聴者目線で楽しめる動画を作ることが求められるから、5時間の労働で十分なのか、10時間必要なのかは作り方次第だろう。

収益化が認められるまでに掛かる日数も、3ヶ月くらいから半年、一年と幅広く、こみちのように2年近く続けてもまだまだ先が見えない人も稀にいる。

特に収益化以上に厄介なのは、旅を終えるタイミングで、「その後」を考えると車旅以上に収益化を達成する方が利点も多く、そうだとするなら、「車旅」を選ぶことから考え直した方がいい。

同じ旅系チャンネルでも、キャンプ系やキャンピングカー系、ホテル系や観光系、電車旅、自転車旅と切り口は無限にある。

「車旅」にどんな視聴者が集まって、どれくらいの潜在的な視聴者がいるのかがと考えると、正直なところ他のチャンネルの方が低コストで始められるものもある。

ポイントは、自身のキャリア構築が他にも継続できるのかという部分で、例えば料理チャンネルを運営するだけなら、仕事を続けることもできるし、資格取得に向けた時間も取れる。

一方で車旅チャンネルの場合、自動車での生活という不便さもあって、自宅を離れるデメリットも大きい。

ここまでで分かることは「車旅」とは「別荘生活」同じで、2つ分の生活基盤を維持するだけの経済力と、時間や場所に縛られない働き方を手に入れた人だけに許されている。

イメージとして、キャンピングカーを使い、旅をしながら動画配信で収益を稼ぎ、自分らしく生きることを目指せるのが、「車旅」。

でも、思いの外、月額のコストも掛かるし、宿泊先だけでも治安や利便性をある程度犠牲にしなければいけない。

例えば旅動画を配信する意図なら、狙った地域を事前に下調べしておき、自家用車で移動し、宿泊先はホテルやキャンプ場などをその旅のスタイルに合わせて変える方が魅力的だろう。

そんな動画配信から視聴者を集めて、夏に北海道一周とか、大きなイベントを企画するという流れが理想的だ。

いきなり無名から日本を巡っても、旅に目的があるなら別だが、稼ぐためには始めるとしたら誤算があることも覚悟しなければいけない。

今の日常生活を捨てて車旅チャンネルを運営するのは、十分な資金力がある人か、今しかできないことにこだわる人でないとリスキーな選択肢かもしれない。


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