老いていく両親を前にして

 中高年の悩み

どう生きれば「幸せになるのか?」と考えた時に、自分と誰かのどちらを主人公にしたいかがポイントになる。

中高年になると、今から10年後20年後が元気かも分からない。

だから、例えばキャンピングカーで気ままに全国各地を夫婦でめぐり、同じ景色や時間を分かち合うことで「幸せ」を共有したいと思う人もいるだろう。

我が家の場合は、まだしばらくは大丈夫と信じたいが、それでも10年以内には両親の介護に向き合っているはずだ。

こみち自身は介護士として施設で働いているから、ちょっと気になるシモの世話も経験済みだ。

結局、理屈をあれこれと言っても、介護には「できるかできないか」しかない。

しかも、どう生きて来たとか、その人柄とか、そんな物語的な部分は後付けで、ボケてくれば今までできていたこともできなくなるし、全く想像しないようなことを始めてしまう家族と向き合うことになる。

きっと初めての経験なら、泣いていただろう。

それは介護が辛いのではなく、変わりゆく家族を見て理由もなく涙が溢れてくるからだ。

だから施設で働く時、いつも利用者の家族の気持ちで接するように心がけているのだが、それでも悲しくて泣きたくなるようなことと、嬉しくて泣きたくなるようなことが日に何度も訪れる。

500万円以上を出してキャンピングカーを購入し、夫婦の時間や思い出を作ることはしばらくできないだろう。

場合によっては両親の介護で今の仕事を辞めることもあり得るし、自宅で引き取ることができないなら施設選びもしなければいけない。

介護系の記事ではないから詳細は省くけれど、施設に預けると言っても月額10万円は必要になると覚悟しておいた方がいい。

長ければ5年10年と生活することになるから、親の年金次第では持ち出しも覚悟しないといけない。

しかもそれがひと段落ついた後、夫婦の年齢や老後を考えると、500万円のキャンピングカーは何か大きなチャンスでもなければ、そう簡単に決断できないだろう。

Twitterを見ていると、キャンピングカーで旅をして、さまざまな場所から見える景色を紹介してくれる夫婦がいる。

きっとこみちよりも若い世代だろうし、両親の介護もまだまだ先の話なのだろう。

こみちだって10年前なら、まだ先の話だと思っていた。

最近、両親に会って話をしていると「年を取ったなぁ」と感じてしまう瞬間が増えた。

妻だってその光景に気づいているだろうから、少し欲しいものも控えて、密かにもしもの資金に回しておきたい。

旅をする意味

人生が最も長い旅だとしたら、これまで短い旅なら何度か経験できた。

出発前のドキドキに始まり、目的地に着くまでが「表」なら帰宅する時は「裏」で、それこそコンパクトな人生の縮図にも思える。

若い人なら旅のそんな表と裏を通じて、これからまだまだ続く人生の旅に活かして欲しい。

多分、もうこみち自身は最も遠い場所を過ぎていて、段々と「故郷」に戻る帰り道に入ったはずだ。

これまでのように新しい発見があって、感動するような経験が増えるというよりも、これまで見たような景色を振り返りながら、段々と「人生」のまとめに差し掛かっている気分だ。

自由に憧れる瞬間があっても、なぜか孤独感を感じ、自由で良いと言われるほどにどこか物寂しい気持ちが増してしまう。

キャンピングカーに夫婦で全国各地を巡ったとしても、そこには家に残した「両親」がいて、毎日暮らせているだろうかという心配が拭えることはない。

「もう、帰らないか?」

まだまだこれから旅が始まるとしても、きっとどちらかがそんな提案をして、帰宅へと急ぐだろう。

それが苦しいことなのか。

不幸なのか。

自分の人生が自分のためにだけあるなら、そんな風に思うのかもしれない。

でも、介護をして思うのは、老いてこそ必要になる助けもある。

好きでお願いするのではなく、お願いするしかない状況が誰にでも必ずやってくる。

今の自分が誰かのために生きるとしても、それは後悔でも犠牲でもないはずだ。

こみちたちはそう思って、いつか来る両親の介護に向き合うつもりだ。

でも時々、近場にはなるけれど、夫婦で少しドライブをして、外食を楽しめればいいと思っている。

幸いにも両親のワクチン接種も無事に済んだし、これで少し安心できる。

またみんなが外出できる間に、みんなで外食に行けたらと思っている。

できれば、身体が動くうちに両親に旅をさせてあげたい。

一泊二日でも、二泊三日でも、負担にならない程度で、夫婦の思い出を作って欲しい。

旅もそうだが、旅の準備と称して、買い物や会話のきっかけになれば嬉しい。

歩くのも段々と大変になって、望んで外出しなくなった父親が、喜んでくれるなら幸いだ。

コロナ禍が少しでも早く収まって、どこか眺めの良い場所に出掛けて欲しい。

でも本当なら、両親と夫婦の大人四人が揃って出掛けることができたら、最高の思い出になるかもしれない。

そんなことをよく考えてしまう。

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