新しい出会いと失いたくない「今」
旅人には、新しい出会いが似合う。
新しい街に新しい人、新しい暮らしもまた旅を続けるからこそ得られるものだ。
一つの街で過ごし、また別の街へと旅立っていく。
思い出は増やしても、心は新しい出会いを求めて前に進む。
例えば、都道府県をめぐり、段々と街から街へと移動する暮らしが当たり前になった頃、今までとは異なる感覚になるような出会いに遭遇することがある。
でも、相手はその土地で暮らし、過去から今を経て未来へと生きる。
ふとした瞬間、旅の目的はその人にめぐり会うためだったのではないかと感じて、ここが旅の終着点なのかと想像する。
初めて会ってまだ数日なのに、今までいろんな人と出会って来たのに、今回だけは特別に思えてしまう。
もう旅を中止して、この地に根を張ることを本気で考える。
あの人がいるから、この景色が特別で、探し求めた場所なのだと思う。
「一緒に暮らそう」
「きっと後悔する」
「いや、離れたくないんだ」
「いつか、巡り会わなければよかったと思う」
「そんなことはない」
「新しい街に来て、嬉しかっただけ」
「出会いたくなかったの?」
「ううん。出会ってはいけなかったの」
もう言葉が浮かんではこなかった。
人は何かのタイミングで自分を変えたいと思ったりする。
旅に出たくなるのも、その一つかもしれない。
でも、変えたいのは「自分の気持ち」であって、「巡り合った相手の人生」ではない。
「出会うべきではなかったのだろうか?」
都会には多くの人が出会いを待っている!?
渋谷のスクランブル交差点に立てば、そこにはたくさんの人が視界に入る。
その内、どれだけの人と話をして、一緒に食事をし、同じ会社で働くことになるだろう。
もしもすると、今日出会った人とはもう今後二度と巡り会わないかもしれない。
自分が通り過ぎた後に、初めてここに着き、そして何も無いまま通り過ぎて行く人がある。
時代を超えた出会い
介護士として働いていると、高齢になった利用者と接することが増える。
年齢差も40歳以上離れていたりして、中高年になったこみちでさえ孫くらいの存在だ。
そして、いろんな思い出話を聞き、その人なりを知る。
しかし、彼らの方が、旅立つ順番が早く来る。
もう少しだけ早く巡り会えていたらと思うことも多く、でも彼らは全てを覚悟して、ふと肩を叩かれたなら、どこかに存在する暖かな場所へ導かれるのだろう。
何かを求めている時は勇気も湧いてきて前に前にと進めた。
しかし、何かで立ち止まった時に、急に心が揺れる。
冒険者の帰り道は、いつも孤独だ。