ビルダーは何を造るべきか?
結論としては、「オーナーの幸せ」と言うことになるだろう。
その中には、見知らぬ土地を訪ねる「冒険心」も含まれるだろうし、産地の物を味わうグルメ旅ということもある。
さらには、食材を調達し、車内で調理できてしまう利便性や即時性など、「その場で楽しむこと」ができるのもポイントだ。
一方で、それを実現するには、給排水、ゴミ処理などキャンピングカーオーナーなら気になる課題も残っている。
ビルダーとして、オーナーに支持されるキャンピングカーを作れば良いのかと言うと、そこはあえて「NO」と言いたい。
もちろん、オーナーによる工夫も含まれるとは思うが、キャンピングカーが現代社会の中で市民権を得て広く浸透していくためには、キャンピングカーを知らない人にも好印象になる配慮が必要だろう。
行き場を失ったオーナーたちが「道の駅」に集結し、キャンピングカーライフを楽しむ姿も、あれだけの装備を持つからには満喫したくなるのも当然だが、ともすれば一般市民からすると騒音や治安悪化の印象につながり、「キャンピングカーって…」とまゆをひそめる存在になりかねない。
そうなれば、「キャンピングカーには興味がある」でも、「どこに行って楽しむの?」と言う疑問が、まだ使い方を知らない人にセールスはできない。
車両購入費にあとどれくらいあれば、「キャンピングカーを楽しめる」と分かっていたら、後は予算や資金調達の話であって、購入後の不安は大きな問題でなくなる。
つまり、キャンピングカービルダーが、「オーナーの幸せ」をどんな手段で実現させられるかで、「Win-Win 」が達成される。
そのためには、個々のビルダーが独自で活動していてもなかなか環境整備は進まない。
だからこそ、大手の企業や行政をどこまで巻き込んだ方針を打ち出せるかになってくる。
例えば、キャンピングカー購入が企業の福利厚生費として計上できることが明確になれば、保養地などと比較してもコストを抑えた取り組みができる。
また、リモートワークが広がる中で、ネットワーク環境を整備するに留まらず、キャンピングカーを移動オフィスと捉えて、新しい事業に発展させられないだろうか。
キャンピングカーオーナーがビジネスを始める「Win-Win」
以前の記事で紹介したと思うが、「理美容師」の資格があれば、「訪問理美容」ができる。
もちろん、「髪を切る」と言うことだけではないが、「相手と会ってこそ始められるビジネス」はまだまだ多い。
例えば、「YouTube撮影」の方法や「ドローン操縦」のアドバイス、「出張DIY」と言うのもある。
インターネットは便利なアイテムだが、大きな欠点は「現実を変えられないこと」だ。
つまり、経験や知識を増やすことはできても、目の前の現実を変えることができない。
そんな風に言うと、「料理などしなくてもネット注文すれば、すぐに届けてくれる」と思う人もいるだろう。
しかしながら、多くの場合、「サービスの受け手」になるだけで、それはつまり自身の幸せをサービスに委ねているに過ぎない。
ともすれば、「Win」の片方が「マネー」そのものだったりして、我々の「幸せ」が後回しになってしまうこともあり得る。
キャンピングカーオーナーになったら、「車中泊」をして動画サイトに公開して楽しむのもありだろう。
しかし、それが唯一の楽しみ方になってしまうと、キャンピングカー市場は思うように拡大しない。
なぜなら、「Win-Win」が曖昧で、キャンピングカーオーナーは「消費者」に過ぎない立場だからだ。
いかにしてキャンピングカーを用いて「ビジネス化」に転用できるかが、これからさらにキャンピングカー市場を拡大させるのに欠かせない。
それには、キャンピングカーを住宅として捉え、「なぜ、そこに住んでいるのか?」に自分なりの答えを見つけることだ。
考えてもみると、住宅に住んでいても、そこが賃貸と言う場合には、「自分の好み」と言うのは立地面で、間取りや装備は後付けで決めたと言うこともある。
だからといって、立地に加えて間取りまで自身の希望に合わせて「マイホーム」を建てられた人は、意外と少ないのではないだろうか。
しかし、キャンピングカーオーナーになる難しさは、まさに「注文住宅」同様で、絶対になければいけないものではなく、でもあると便利だと言う位置づけだからだろう。
つまり、「そのキャンピングカーで何をしたいのか?」と聞かれても、初めて購入する人にはイメージし難いし、既製品のキャンピングカーでは自身のイメージを活かせないこともある。
例えば「DIY」でも作れる余白が有れば、用途によって変更できるから、なお面白くなるはずだ。
大は小を兼ねる!でも欲しいのは…
マイホームに比べれば、キャンピングカーの大半は「制約」がある。
でもその良さや可能性に憧れるからこそ、新発売されたキャンピングカーが気になってしまう。
一回の旅行期間と言う選び方もあるが、車内調理や就寝人数、トイレやシャワー設備の有無を考えると、大体の目安が決まる。
そして、移動中の運転まで考慮すれば、ワンボックスベースかトラックベースかも絞り込まれる。
小さな土台にどんどん荷物を増やしていけば、当然だが不安定になり、危険性を増してしまう。
一方で、土台を大きくし過ぎれば、扱いに困って使わなくなってしまうから注意が必要だ。
その意味では、適切なサイズを選ぶアドバイザーの存在が問われるだろう。
ただ、業界にはそれぞれに「特有のしがらみ」が存在していて、改革に腰の重い重鎮が控えていることもある。
その流れが個性的なほど、新規参入した企業はやりにくさを感じ、深みにはまらないギリギリで商売を続ける。
もしもキャンピングカー市場が今以上に拡大し、マイカーと同じ感覚で選ぶまでになれば、自ずと環境改善は進むだろうし、今以上に便利なアイテムになるはずだ。
仮定の話だが、一般住宅における構造計算のように、キャンピングカーにも「適合マーク」みたいな目印があっても面白いだろう。
その項目として、「手荷物積載重量」とか、「難燃性レベル」とか、「遮熱・遮音レベル」とか、実は意外とキャンピングカーを比較する時に分からないポイントは多い。
しかし、販売個数が増えてくれば、自動車メーカーからも用途に応じた特装車が提供されるだろうし、金融機関や保険会社まで巻き込めれば「残価設定」という購入方法も選べるかもしれない。
そして、キャンピングカーを「住宅同様」にまで引き上げられれば、一定の装備や条件を得ることで、住宅をもたない暮らし方に理解が進み、住民票の管理も開かれるとなれば業界は一変するだろう。
なぜなら、住宅メーカーが本格的に参入するだろうし、当然ながら既存の自動車メーカーや電気自動車メーカーもキャンピングカーを視野に入れるからだ。
何より行政も動くだろうから、過疎化が進む地域に「仕事」を集めて、そこで生活を継続できれば、キャンピングカーがもっと実社会に溶け込むアイテムなる変えられるだろう。
まさに、「Win-Win」がいろんな場面で実感できるようになると思うのだが…。