「再生回数」という見えないプレッシャー
これまで、人気のチャンネルがどうして人気なのか考えて来ました。
例えば、今はYouTuber よりもタレントというイメージが強い「フワちゃん」ですが、昨晩、上沼恵美子さんとの共演をテレビで観ていて、これだけの気配りができる人なら、YouTube でもテレビでも活躍できてしまうのだろうと納得しました。
誰にでもタメ口を使い、それこそフワフワした印象ですが、それは「フワちゃん」という演者としての姿勢。
実際、上沼恵美子さんの会話を聞いている時のフワちゃんは、全くの別人というか、フワちゃんを演じる本人の人柄が出ていました。
ポイントとなるのは、「注目されたい」という欲求に、「目立つ」という方法を選ぶか、「見たくなる」を選ぶかではないでしょうか。
誰でも、娯楽や休憩を必要とします。
そしていろんな方法でそれを満たそうとしているわけで、「視聴される」というニーズは絶対にあります。
でも、「目立つ」という選択は、一過性の「何これ?」という興味を誘いますが、原因が分かってしまうともう「目立つ」にはなりません。
むしろ人の目から遠ざかってかしまうでしょう。
だから、「目立つ」を選ぶと、過激になって行くしか方法はなくて、そこに限界を迎えると行き詰まるのも流れとしてはあり得ます。
しかし、だからと言っても、「視聴される」というのは簡単ではありません。
主役級の人になりたくても
ドラマや映画で「この俳優が出ている」から観ようと思ってもらえる人は、それこそ主役級の評価を受けた人です。
でも主役級って、単に演技が上手い人ではありません。
つまり、テクニックをどんなに磨いても、名役者にはなれますが、主役級とは別物だからです。
言い換えると、生まれ持った資質があって、それこそ新人発掘オーディションでも一番の美人よりも、一見すると素朴で普通の人が選ばれたりするのは、「伸び代」を評価しているからでしょう。
それこそ、現時点でベストな人と、見せ方や売り出し方次第でこれから主役級に成長できる人は根本的に違っていて、数万人が参加するオーディションで、数名しか合格できないのは、それだけ原石として手掛けたい人材は多くないからです。
YouTube も日々変化している
今から5年くらい前にYouTube を始めた人で、今は人気チャンネルとなっている人は、コロナ禍で在宅時間が増えた視聴層に追い風を受けたと思います。
「面白そうなチャンネルは無いかなぁ?」と多くの人がYouTube に触れていたからです。
例えば、遠出を自粛していた人は、旅に関するコンテンツを観て、行った気分になったでしょう。
しかし、段々と多くの人が行動するようになってくると、コンテンツとして「旅を見たい」というよりも、自分自身が旅に出たいと思うでしょう。
つまりそれは「車中泊」のような流行りにも言えることで、宿泊施設に泊まれない代替えとして注目されたという事情もあったはずです。
その意味では、車旅だけが唯一の方法ではなくて、飛行機や電車、船など、いろんな移動手段を組み合わせて旅をさらに楽しもうと思うでしょう。
そうなると従来の「車中泊」コンテンツのままでいいのかという疑問も浮かびます。
「「車中泊」が人気なら!」という流行に刺激されてYouTube を始めても、簡単に人気が得られないのは、やはり今は「車中泊」そのものではなく、車中泊している「人」に興味関心が移ったからでしょう。
どこかの道の駅を訪ねて、駐車場の片隅を陣取り、夕方に車内調理する食材を買い込み、入浴施設を利用したら、車中泊用に改造した車内で一夜を過ごす。
限られたスペースだからこそ、視聴者との距離も縮まり、焼いただけでもそれなりに楽しく感じられる。
そんな時期もありました。
でも、家で料理をすれば、もっと凝った物が簡単に作れるのは間違いありません。
つまり、あの頃は、あの狭い空間でできることがよかったのです。
でもその空間も、コロナ禍の変化で変わり、料理したい人はコストコに食材探しに行くでしょうし、旅をしたい人は車ばかりでなく、飛行機で海外にも飛んでしまいます。
じゃ、「視聴される」ってどういうことなのかに話が戻って来るのですが、やはり「主役級」という選ばれた人材という条件は変わりません。
ただ、それは「知名度」という要素でも補えるので、5年前や、もっと以前から始めていたYouTuber はそれだけ成功できる人たちです。
言い換えるとこれから始める人にとっては、YouTube とは異なる業界での実績や知名度などを活かすか、テクニックな役割に徹して、主役級の人とタッグを組むことがポイントです。
いずれにしても、世間の動きが変わろうとしている時期なので、ココ数年にウケていた企画も段々とウケなくなってしまうでしょう。
再生回数が下がって来た時、焦って衝動的に「目立つ」行動に走れば、いずれは行き詰まるという展開に進みます。
そこで、今の内に知名度を活かして、その優位性で何かできるのかをもう一度考え直すことでしょう。
ウケている時は、それこそテレビに出たり、歌を歌ったりしても評価されるのですが、落ちて来た時に本当の自分が露呈し、今までとは別物の評価に戸惑うかも知れません。
しかしよくよく思い返せば、学生時代にどんなキャラクターで、どんな風に周りから思われていたでしょうか。
意外と、その評価は年を重ねても変わらなくて、どこに行っても主役級の人はやっぱり芸能界でもそうなれる人です。
しかし、誰しもが中学高校辺りで限界を知り、プロにはなれないと実感するものです。
大人になってもっと勉強しておけばと思うのも、「勉強」ほど楽しくて成果が分かりやすいことなどないと気づくからでしょう。
10代、20代の「若さ」って、やはり30代以降の人には羨ましいことですが、若い人も10年経てばもっと若い人を羨む時が来ます。
これは生きていれば必ず起こることで、だからこそ老いても輝いている人は「若さ」に甘じることがなかったのでしょう。
第一線で活躍されるYouTuber が引退や休止を選ぶのは、これからを見据えてもう一度、準備を整える期間なのかも知れません。
特に若さを存分に発揮した印象がある人ほど、新たに感じることが多いのでしょう。
アイドルを引退した人が、しばらくぶりにテレビなどで見ると、物凄く落ち着いた印象で、しかもいい意味で大人になっていて驚いたりします。
でもそれは引退して変わったのではなく、アイドルとして求められることを精一杯していた頃から、自分自身をそのまま出すようになっただけだと思うのです。
輝いている人は、やっぱり輝く努力もしていますよね。
人気YouTuber が引退されて、今後はどんな風に活躍されるのか、とても関心があります。